すみれの花のような人

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すみれの花のような人

 そして、ついにその時はやって来た。  王子と、ドロシーが出会う運命の日が……。  長い金髪に、銀色靴に、すみれの花のような濃い紫色のドレス。  断言して言うけれど、彼女は、ドロシーではない。 でも、きっと、実物のドロシーより、綺麗だろう。  「私、デイジー。」喘ぎあえぎ、ドロシーは言った。 王子の頭の中で、「ドロシー」と認識される限り、デイジーは、 王子にとって、永遠にドロシーなのだ。  「朝起きたら、我が家が竜巻に、飛ばされしまったの。私、今日は、木の上で目覚めたの。私のスカートは、途中で、木にひっかかって、破れてしまったの。あー、 美しい王子、助けてください。」  「もちろん、放っておけないよ。僕と結婚してくれるかい?」  身勝手な王子は言った。  「ええ、お受けしますわ。私、家族とも、はぐれてしまったから。今日、泊まる家もないのです。」  〈こうして、王子とデイジーの結婚式は、行われました。めでたし、めでたし。〉で、終わるお話ではないことは、まこが、一番よく知っていたの。  だって、この「ドロップ・ドロップ・ドロップ」は、まこが主役だからね。 主役のお姫様が、失恋したままではいけないもの。  ここからが、やっと物語の始まりなのですよ。  
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