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空の雫
空から落ちて来た。透明な水面を破るように。
それは、金髪の王子様。
戦争に敗れたように、王子の綺麗な青いドレスは、擦り切れている。
「ドレス」と言っていいのだろうか。名前が分からない。
何時の時代の人なのか。
もしかしたら、未来から来たのかも……。
中里まこは、駆け寄ると、野原に仰向けに眠っている、王子にキスをして、
抱き起こした。
「大丈夫ですか。」
そう言って、自分のことを見ると、
ますます、不思議なことが起こっていた。
まこは、いつのまにか、お姫様みたいなドレスに、着替えていたのだから。
ドライフラワーのような、花びらが、縫われているドレス。
胸元は、透けている。
王子は、目覚めて、言った。
「君、栗みたいに、美味しそうだね。いや、焼き立ての林檎みたい。」
まこは、自分の髪に、目をやった。
本当に、長い巻き毛になっている……!
ソワソワと、風に揺れる柔らかさが、
自分の頬や、首元、背中の感触でも、わかった。
「お腹、すいたの? お茶にしましょう。
紅茶を淹れるわ。」
そう、夢見るように、自然に言えるくらい。
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