エール

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だから言ったじゃない。 さみしい、と一言だけ弱音を吐いてきた彼。 本当はさみしがりやで一人暮らしなんか全然向いていない彼。 ヒゲなんか生やして、ちょっと目ヂカラ強めにワイルド気取っているけど、ヒゲがなかったら割とベビーフェイスな彼。コラーゲン入りのグミが好きなだけあってか、結構な赤ちゃん肌だったりする彼。 実は朝型で夜の工事現場のバイトどころかオールのライブすらホントは苦手な彼。 わたしと彼は音楽を通して出会った。地元のライブハウス。たまたま、女性ばかりの出演者の中、ぎゅうぎゅうの控室の隅っこで抱えたギターケースに隠れるようにして座っていた。そういえば、まだその頃は、ヒゲはなかった。 最初に話しかけたのがどちらだったか、もう覚えていない。ただ、今どき珍しいキツイ地元言葉に、無条件に安心したのを覚えている。 メジャーを目指して叶わないまま戻ってきたばかりの私。 地元で着実に一歩一歩進んでいた彼。 東京でのライブハウスとのコネクションの作り方とか、ロジョーをやりやすい場所なんかを教えたりする内に親しくなった。 私は音楽自体をやめるか迷っていたし、さんざん自分が取るに足りない存在だとすり込まれて帰ってきたところだったから、誰かに必要とされて、役に立って、喜んでもらえるのが、ある種のカウンセリング?ヒーリング?になっていた。
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