異聞 哀愁セレナード

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        1  「ラヴェルの〈道化師の朝の歌〉。それと〈亡き王女のためのパヴァーヌ〉を」  『弾きたい曲ある?』その問いに、高校三年生の高峯アキラはほぼノータイムで答えた。  夏のコンクールで全国優勝を果たしたアキラは、受賞者コンサートへの参加が決定している。そのコンサートでの演奏曲を決めるため、ピアノ教師の間野(まの)と話し合いを始めたところだった。  アキラは七歳の時、神成ピアノ教室でピアノを始めた。その後2回の転勤を経て、この間野ピアノ教室へ行き着いた。  間野ピアノ教室は突然転がり込んできた生徒を受け入れ、開催間近のコンクールへ向けた指導を嫌な顔ひとつせずにしてくれた。アキラはそのことに深く感謝している。
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