異聞 哀愁セレナード

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 何かを言わなければと思う。なのに上手く言葉が出ない。こんな経験は初めてだった。  「僕、来週には京都に引っ越すんだ。最後にこんな演奏を聞けて感動した」  「最後……? 」  「? だって、これからは僕は京都、アキラは東京。別々の進路だよね? 」  ショウは首を傾げた。  「アキラともお別れか。一年、あっという間だった。寂しいな」  「ボクの、演奏を聴いて、なにか、思い出さなかった?」  「なんのこと? なにかって何? 言ってくれないと、わからないよ」  もうここから居なくなりたい。一人にさせてくれ。  そう叫ぶ人格を奥に押し込めて、殺して、アキラは柔らかく、ふわりと微笑んで言った。  「なぞなぞだよ。絶対に解けない、意味の無いなぞなぞ」
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