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私には、失ったものがある。
昔はあったはずのそれは、昔は私を豊かにしてくれた。
春が来た、喜び。
夏が来た、解放感。
秋が来た、寂しさ。
冬が来た、切なさ。
四季を楽しんでいたあの日。
春のわくわくして迎えた、新学期。
夏の待ち遠しかった、夏休み。
秋の喪失感が漂った、枯れ木達。
冬の寒さ耐えていた、通学路。
四季折々の感情。
私は、いつかの、どこかの季節に、置き忘れてしまった。
時の流れに忘れた、私の落とし物。
そう。
落としたその日から、私を蝕んでいった。
きっかけはわからない。
でも、あの人が、いなくなってから。
あの人の中に、私がいなくなってから。
もしかすると、それが私の落とし物なのかもしれない。
今、私は、列車の中にいます。
私の忘れた、忘れ物。
私の落とした、落とし物。
それを探したくって。
それを見つけたくって。
それを受け取りたくって。
それを私は欲していたから。
だから、私は取りに行きます。
あの日忘れた忘れ物を。
あの日落とした落とし物を。
あの人の元へ。
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