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この甘い空気には覚えがある。これは樹液の香り。私の大好きなクワガタムシやカブトムシの大好物の匂いであり、私自身も心地よく感じている。
このにおいが漂ってくるということは…そう思いながら暗闇の中で目を凝らすと、ブーンという低い羽音が聞こえてきた。
その黒い影はやがて1本の木に吸い寄せられるように止まると、少しずつ歩き、やがて動かなくなった。
私は更によく目を凝らすと、その姿がなんとなくわかった。これはノコギリクワガタ!
慎重に手を伸ばし、私はクワガタムシを木の幹から摘み上げた。捕まったクワガタムシは、じたばたと体を動かして逃れようとしているが、当時から私はこの手の昆虫の扱いには慣れている。適当に手の上で遊ばせながら、私は再び、二川君の言ったセリフを思わず口にしていた。
そうか! という言葉が口から洩れたのは、それから5秒ほど後のことだった。
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