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夏も本格化したある日、私はクラスメイトの日之出君の家に遊びに行っていた。彼の家は隣の団地にあるため、タイムトンネルをもちろん使う。
普段なら特に買い物をすることもないので手ぶらなのだが、この日はポケットに500円玉を忍ばせていた。それもただの500円玉ではなく、昭和64年の500円玉である。
以前、日之出君と学校で話したとき、そのレアコインの話をしたら興味を持ったので、今日は実物を見せようと思っていたのだが、ポケットに入れてしまえば安心して忘れてしまうのが私である。
ちょうど彼の家ではテレビがついており、そのアニメにはまった私と日之出君はすっかりはしゃいで、気が付いたら日没近くになっていた。
日之出君のお母さんは、気を利かせて車で送っていこうかと聞いてくれたが、あまり無遠慮に頼みすぎると、母親に叱られてしまう。私は丁寧にお礼を言って日之出君の自宅を後にした。
表に出ると、本当に太陽が沈みかけていた。見事な夕闇が私だけでなく家々や雑木林の木々を赤く染めている。このまま日暮れ後に戻ったらいくら何でも怒られてしまうだろう。
歩きながらどうしようか考えた結果、私はある危険な賭けをすることにした。
――タイムトンネルを使えば、まだ間に合う!
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