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少し歩いただけで夕闇はその強さを増していることを、当時の私も肌で感じ取っていた。
ただでさえ薄暗いタイムトンネルは、夕闇に照らされ、まるで赤黒い怪物が口を開いたような姿だ。その姿を見て引き返したいと思った。しかし後ろを見ると、すでに東の空は青み掛かり、ぽつぽつと星のようなものが見える。もはや時間は残されていないようだ。
満を持した私は、ポケットからブラックブラックガムを1つ出すと、噛んで自分を鼓舞することにした。
まあ、こうなってしまうのも仕方ない。当時としては考えられないほど大胆な行動をしようとしているのだ。何せ普段の私は、家の中にいても暗闇が怖く、2階に上がるときさえ、家族の誰かがいて欲しいと思えるほど臆病だった。図体はでかいくせに何やってんの、と今なら思えるのだが、当時はそうだったのだから仕方ない。
当たり前だが、タイムトンネルの中には、無数の木々と、むき出しになった赤土しかない。地面は乾いていて歩きづらくはないはずだったが、すでに足元は見えづらく、なんとも言えない不安定さがあった。
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