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蚊のおかげだろうか。怖いと思うより、どこか苛立った気分のまま私はタイムトンネルを抜けた。
予想した通り、私の宝物である昭和64年の500円玉は、地面に落ちており、持ち主の帰りを待っていた。安心した私はそれを拾い上げたとき、ふと、二川君の言葉を思い出した。
――知ってるか? タイムトンネルって日暮れ後に行くと、そのまま時間がおかしくなって…数年後か、下手したら十数年後にタイムスリップしてしまうんだってさ
私は生まれて初めて、鳥肌が立つという言葉の意味を思い知った。暑くもないのに、体から冷や汗が流れ出てくる。それってつまり、私はそう反芻しながら空を見上げていた。
すでに空には様々な星がきらめき始めていた。これはどう見ても、日暮れ後だ。
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