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そうしてしばらくすると店主が奥から姿を現す。店主と呼ぶのも堅苦しいのでお婆ちゃんと呼ぶことにしよう。お婆ちゃんは僕を一度見てから、ようやく客の存在を確認し、次にその客が僕であることを認識する。
ごめんねぇ、猫に餌をやっていたものだからと申し訳なさそうにする姿ももう見慣れたものだ――――
「――勉強ならカウンターじゃなくて、後ろの広い席にどうぞ?」
声を掛けられ、はっとしてキーボードを叩いていた手を止める。
「あ――いえいえ、お構いなく……コーヒー下さい」
言って、僕はノートパソコンを閉じた。いつの間にか出されていたお冷で口を湿らせ、少々熱過ぎるおしぼりを一度開いて冷ました。
「はいはい、畏まりました。すごいねぇ、私にゃそんなハイテクな機械扱えないよ」
「いやいや」
「私なんて、ついこないだまでガラケーで通してきたのに、渋々変えたスマートフォンが使えない使えない。娘に教えて貰う度に怒られないかびくびくしてるよ」
食器棚から藍色の陶器製コーヒーカップとソーサーを取り出しながら、お婆ちゃんは言った。そして予め火にかけていたヤカンから少量のお湯を注ぐ。
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