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ほどなくして、僕の前にコーヒーが提供された。注がれたコーヒーは、藍色のカップに良く合っていると思う。
「いただきます」
「これも食べてみて」
言いながら、蒸しパンやらチョコレートやらも、いつものように。
「いつもこんなに。すいません」
「孫みたいなものだからねぇ、色々出したくなるのさ」
そして僕がコーヒーを飲み終わるタイミングで、緑茶か紅茶も出てくるのだろう。
店内は聴いたこともない女性歌手の歌謡曲が流れている。いつも同じアルバムを掛けており、大体これが一周するのを頃合いに僕は帰り支度を始める。
感謝されたいからとか、お婆ちゃんの言っていたように孫の代わりになれればとか、そんなことを考えたことはない。ただ、この絶対に混むことが無い喫茶店の空気が、堪らなく居心地が良いのだ。
――そしてまた思い出す。こんなことを文字に起こしてどうしたいのかと。わからない。わからないけれど、起こしてみたくなったのだ。それ以上でもそれ以下でもない。
僕はカップを手に取る。かちゃり、と陶器の音が静かに響いた。そして一口、コーヒーを飲んだ。
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