空っぽ

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躊躇なくホテルに入った水樹さんは、無人の受付パネルを流れるようにタッチし空いている部屋を確保し、黙ったままエレベーターに乗った。鏡面になっている壁には暗い顔で階数を見つめる彼が映っていて、私もまったく同じ顔をしている。到着し、また義務のように手を繋いで、歩きだす。 部屋に着くとドンと背中を中へ押され、私はそこに荷物を置いて立っていた。水樹さんは自分の家のように歩き、テーブルの上に用意されていたミネラルウォーターを一気飲みする。 「……水樹さん」 どうするんですか?という疑問を込めて声をかけると、彼はペットボトルを握りしめてゴミ箱へ放り、私の体を片手でベッドの上に倒す。ベッドを横切るようにして、私たちは重なって倒れた。 「きゃっ……」 馬乗りになる水樹さんの重さで、ベッドがギシッと音を立てた。大口を叩いたのはこちらだが、水樹さんにこうされるとほかの人とは迫力が違い、緊張で冷静ではなくなっていく。
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