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スクランブル交差点にたどり着き、キョロキョロとあたりを見回す。向こうが車椅子を押していたとしても、さすがにもうどこかへ行ってしまっただろう。そこでふと思い出す。この道をしばらく行った区画には、一条ホテルグループの本社オフィスがある。
足は勝手に、そこへ向かった。
仕事場へ行くのかな。いや、そんな顔ではなかった。心臓の音が止まらず、フラフラとオフィスのある区画へ。ああ、見つけた。前方に車椅子を押すスーツの後ろ姿がある。水樹さんだ。
彼らがエントランスへ入っていく姿をボーッと見つめた。部外者の私はそこへは入れないため、突き当たりの道路に立ったまま、動かなかった。
ガラス張りのオフィスのため、中に入っていった彼らがまだ見えている。エレベーターを待っていた。水樹さんはやはり笑顔を浮かべ、車椅子の女性の横に屈み、談笑しているように見える。
エレベーターが開き、誰も乗っていないその箱へ、彼は車椅子の女性だけを乗せた。
女性は自分で車椅子をゆっくりと動かし、扉の外にいる水樹さんに向き合う。ちらりと見えたが、女性の顔はガイコツみたいに痩けていた。水樹さんが内側に手を入れ、階数のボタンを押す。エレベーターの扉が閉まるとき、ふたりは手を振り合っていた。
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