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水樹さんは墓石から離れ、こちらへ吸い寄せられるように私を抱きしめた。あたたかい。泣いている。私もうれしくて同じ涙が出た。
「使いきれないほどの金がある。全部ふたりで使おう。なにも残らないように。今までできなかったことをやり尽くして。セックスも、したくなったら、しよう。もうしない理由はとくにないから」
「水樹さん……」
ギュッと体を抱きしめて、涙で濡れた彼と額をくっつける。
「全部終わったら、最後はふたりで手を繋いで、光莉の母ちゃんのところへ行く。俺も一緒に連れて行ってくれ。ひとりにしないで。もうひとりは嫌なんだ。光莉と一緒にいないと、俺はどこへも行けない」
私もだ。水樹さんと一緒にいないと、もう生きることも死ぬことも、できそうにない。やっと彼と同じ未来を見ている気がする。
目を閉じて、いつまでも終わりのこないキスをする。
もう二度と彼を離さないように。
END
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