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ジークが去って行った後、結局はリオンとシエル達もそのまま解散の流れとなった。
今の自分達の状態では今日はこれ以上何も出来ないし、あれだけ厳しく注意された後では大人しくしているしかない。
万が一、ここを追い出されるような事になったらもう他に行く当ては無い。
流石にそれは困る。
リオンを含む他の者達は各々自分の家へと戻って行ったようだが、シエルだけは自宅へ戻らず、スラムの街中をブラブラと歩いていた。
軽い気分転換だ。
子供がただ一人自宅に戻って全てを飲み込むには、今日はあまりにも多くの事があり過ぎた。
せめて相談出来る家族が居れば良いのだが、シエルを含むここの者達の大半は親が居ない。
死んだか、生まれた時からそこに居る捨て子だからだ。
今日の出来事の中で特にシエルの中に引っ掛かっている言葉がある。
「自分達には自由が無い」と言っていたリオンのあの言葉。
本当はどちらが正しい事を言っているのかなど少し考えれば誰でも分かる筈だが、今日実際に行動を起こしてみて分かったのは現実はそう甘くないという事だった。
行動を起こすのは全て自分なのだから、やったかやらないかだけだ。
成功者の中にはそんな事を嬉々として語る者が居るが、世界中全ての者が彼等と同じフィールドに立っているわけではない。
本人にその気があったとしても周囲の環境がそれを許さない場合もあるのだ。
今日のシエル達はまさにその典型だ。
認めたくはないが、やはり自分達は自由を奪われている側の存在だ。
そう認めざるを得ない体験をしてしまった。
リオンだけではない。
シエルだって本当はこんな惨めな今の自分がこれからの人生の全てだなんて思いたくはないが、現状を打開する為の力が今の自分には無い事もまた痛感していた。
だから余計にもどかしく、モヤモヤとした気分になった。
大きな溜息をつき、シエルがろくに整備もされていないような寂れた公園の前を通り掛かったその時、彼女に声を掛けてくる者が居た。
「お~い、シエル!」
声のする方を見てみると、そこには滑り台の上に腰掛けながら手を振る一人の少女の姿があった。
小柄で黒髪のツインテールの少女だ。
「アカリ」
それを見たシエルもまたアカリの名前を呼ぶが、アカリはシエルの姿を見た途端、少しばかり険しい表情を浮かべた。
「どうしたの?随分酷い顔してるけど・・・」
「何気に悪口だよ?それ」
「いやいや、そういう意味じゃないって」
不機嫌そうな顔をするシエルを宥めながらアカリはそう言った。
「それで、どうしたの?その顔の傷」
「あぁ、うん。実はね・・・」
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