EP6 アンダーアルカディア③

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レッドアイはすぐさま次の攻撃の為の準備に入る。 そしてレインが目前に迫ったその瞬間、レッドアイは集中させていた魔力を解き放ち、彼に対抗する為の魔法を発動させる。 レッドアイを中心に突如として強烈な爆風が吹き荒れ始め、魔物を含む周囲の全ての物を吹き飛ばしていくという現象が起きた。 「くッ!なんて風圧なんだ・・・」 魔法を発動させたレッドアイから離れた場所に居る筈のシエルの所にまでその影響は及んでいた。 これは風属性初級魔法ブラストの効果だ。 使用者を中心に強烈な爆風を巻き起こす事で対象を吹き飛ばしたり、魔法や飛び道具といった自身への攻撃の軌道を逸らす事が出来る。 この魔法を以てレインの体勢を足元から崩し、その瞬間を更に強力な魔法で攻撃するというのがレッドアイの狙いだったようだ。 しかし、この狙いは大きく外れる事になる。 周囲の様々な物が爆風によって吹き飛ばされていく中、レインは変わらずその場に立っていた。 魔法を発動させたレッドアイの目の前に居ながら、まるで最初から何事も無かったかのように平然とその場に立ち尽くしていたのだ。 これはブラストの爆風によって吹き飛ばせない程にデモニックビーストと化したレインの体重が重かったという事もあるが、それ以上に彼の体を包み込む魔力の防御力が高かったという部分が大きい。 魔法を用いた戦闘の場合、魔法の使用者同士の間に魔力差があればある程、受けるダメージも与えられるダメージも小さくなる。 その差が絶対的なものであれば、ダメージを与える事さえ出来ない。 つまりこの時点でレッドアイとレインとの間にはそれだけの魔力差があり、埋めようの無い力の差があったという事だ。 「ウ、ウゥ・・・」 知性を持っているからこその行動なのか、この時レッドアイは僅かに後方へと後ずさりをした。 あの凶暴な魔物として知られるレッドアイがこんな行動を取る所なんて初めて見た。 その光景にシエルが驚いていると、レインは遂に最後の行動を取った。 大きく腕を振り上げ、それを自分の事を見上げているレッドアイ目掛けて勢い良く振り下ろす。 ドズンッという激しい地響きと共にレインの腕にレッドアイの体が潰され、そこから伸びるナイフのように鋭い爪がその体を貫く。 「ギャアアアァァァ!!」 レッドアイが悲痛な叫び声を上げるが、レインは一切の容赦をしない。 大きく口を開け、一気に顔を近付けると、そのままレッドアイの頭部を食い千切り、消滅させてしまったのだ。 そしてレッドアイが消滅したその瞬間、全魔物の統率が失われ、増強させられていた魔力も元通りになり、残っていた魔物達の危険性は一気に低下。 目に捉えたものをただ手当たり次第に攻撃するだけの烏合の衆となり果てた魔物達をレインが全て蹴散らすのにもそう時間は掛からなかった。 「す、すげぇ。アイツ、たった一人でレッドアイと魔物の一団を全滅させやがった。なんて奴だ」 敵が全滅した事で生き残っていた魔法使いの一人が顔を出すが、その瞬間近くに居たもう一人が大声で叫ぶ。 「馬鹿、奴の前に立つな!!殺されるぞ!!」 「え・・・?」 「今の奴は正気じゃない!!」 その声が周囲に響き渡った瞬間、レインの鋭い瞳が彼等の姿を捉える。
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