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目標だったレッドアイの一団を全滅させ、レインの暴走も収まった今、シエル達が争い合う理由は無くなった。
その場にはしばしの間、沈黙が流れていたが、周囲を見渡していたレインが静かに口を開く。
「俺はまた大勢の者達を殺してしまったようだな」
「ようだなって事は、やっぱり自分の意志じゃないんだね」
しかしレインは首を横に振っていた。
「俺がこの手で殺した事に変わりは無い。俺なんかと同じ任務になってしまったせいで死んだんだ。そいつらからしたら、たまったもんじゃないよな」
「でも殺したくて殺したわけじゃない。そうでしょ?」
シエルのその言葉にレインは彼女の方に視線を向ける。
「レインは体内の魔物の因子のせいで精神を蝕まれていて、普通の状態じゃない。あなた一人のせいじゃない」
「シエル・・・」
「でもそれが原因でアンダーアルカディアに堕とされたとも聞いている。元々は本部所属のレッドアイ殲滅部隊の隊長を務めていた筈のレインがどうして魔物の因子なんか。当時のあなたの身に一体何が・・・?」
「そうか。そこまで知ってるのか」
レインを静かに目を閉じ、そして大きく息を吐いた。
本来であれば、ついさっき知り合ったばかりの人物にそんな踏み込んだ部分の話をしてやる義理など無い。
しかし先程の彼の言葉にもある通り、アンダーアルカディアに来て以来、こんな風に自分に接してくれたのはシエルが初めてだったのだ。
だからそんな彼女にならば話しても良いと思えたのだろう。
「分かった。じゃあ少しだけ俺の話に付き合ってくれ」
そう言ってレインは自らの過去について、静かに語り始めた。
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