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後に分かった事だが、今回の任務はレッドアイの撃破と並行してレベル5であるレインの能力を安定させる為の方法を探る実験でもあったようだ。
実戦における戦闘行為を促し、能力を安定させる方法を探るのは勿論のこと、何が原因で現在の不安定さを招いているのかを突き止める為の実験だ。
別の個体とはいえ、レッドアイはレインにとって部下を失う原因となった因縁の相手。
そんな彼がその因縁の相手を前にした時、どんな行動を取り、どんな変化を見せるのか?
今回研究チームとインスペクター達が見ていたのもまさにそこだったのだ。
結果、レインの暴走はいつも以上に加速し、あっという間に完全体にまで変異してしまう程の事態となった。
この事から分かるのは、やはりレインの中にはレッドアイや魔物に対する憎悪、トラウマといった負の感情が深く刻み込まれており、今尚色濃く残っているという事だ。
そうした人間の精神的な弱みに対し、魔物の因子は立ち所に反応し、自分達の側に取り込もうとして来る。
魔法使いの力の源は魔力の強さであり、その魔力の強さは使用者の精神状態に大きく左右される。
つまりレインの能力が不安定なのは、彼が精神的に深い傷を負っているからであり、今尚トラウマを克服出来ていない事が原因と言える。
彼が自身の魔力を安定させ、魔物の因子からの干渉をものともしない程の精神力を身に付ける事が出来たならば自在に能力を操れるようになるだろうが、現状それは難しいだろう。
人の心を治すのはそう簡単ではない。
下手をすれば一生治らない傷もある。
そしてそんな不確かなものに時間と金を掛ける程、アンダーアルカディアの研究者達も暇ではない。
彼等はこれから先も自分達の制御出来る範囲でレインを使いまわし、そして完全に壊れる時が来たら容赦無く切り捨てるだろう。
彼等にとって実験体とは、その程度の存在なのだ。
しかし一方で進展もあった。
今回の生き残りはレインとシエル。
そしてシエルと共にレインの話をしていたあの男の計三人だ。
現時点でのシエルはレベル1であり、戦力的価値の無い個体という評価に過ぎないが、今回の実験を経てあの男と一部の研究者達の間で彼女は注目されるようになる。
何故なら彼女はアンダーアルカディアの中で唯一、あの暴走状態のレインを止める事に成功した存在だからだ。
あの時、シエルがレインに何をしたのか。
彼等はその具体的な部分までは把握出来ていない。
だが、今回のこの結果を受けて彼女は他の個体には無い何かを持った特別な存在なのではないかと考える者達が現れたのだ。
それまで何でもないと思っていたシエルという存在に白衣の悪魔達が興味を持ってしまったわけだ。
そしてこの事が引き金となり、シエルに秘められた潜在能力を引き出すという目的の為、彼女に施される実験と改造はより一層過激さを増していく事となる。
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