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一週間後。
研究チームの者達が話していた通り、シエルをメンバーに組み込んだ時間無制限のデスマッチによる戦闘実験が行われる事が決定した。
どのような形で行うにしろ、本来であればアンダーアルカディアで行われる実験には全て制限時間が設けられている。
時間は有限。
限られた時間の中で効率良く、より多くの実験を進めて行く為には一回の実験に使う時間をきっちりと管理していかなければならないからだ。
そのアンダーアルカディアの基本ルールを曲げてまで話を進めたという事は、余程研究チームの者達が今回の実験を強く推したのだろう。
そしてそんな彼等の要望が問題無く通ったのは恐らく、このタイミングでアンダーアルカディアにおけるシエルの注目度が上がっていた事も関係している筈だ。
レベル1という存在でありながらレベル5やレッドアイからさえも生き延びた彼女がこの条件下でどういった行動を取るのか。
皆、そこに興味があるのだ。
自分を含めて何人の実験体が参加させられるのかは知らないが、最後の一人になるまで殺し合うデスマッチという事はつまり、シエルも確実に一人以上の相手を殺さなければ生き残れないという事だ。
制限時間や定員数まで生き残る、複数で一つのターゲットを仕留めるといったこれまでの戦闘実験とは明らかにクリア条件が異なる。
これまで何とか誰一人殺す事無くやって来たが、遂にそうも言っていられない状況がやって来たという事だ。
生きるか、死ぬか。
この実験中の振る舞い方一つでシエルの命運が決まるのだ。
牢獄エリアの独房から連れ出され、複数のインスペクターや研究者達と共に歩くシエルが実験場エリアへと向かうその途中、ある者達とすれ違った。
ミヤビ、レイン、そしてユウナ。
皆、シエルと関わりを持った事のある者達だ。
どうやら彼女達もまた、今回のシエルの実験を見届けるつもりでいるらしい。
たかがレベル1の実験の為にアンダーアルカディア筆頭格の三人が同じ場に揃うなど滅多にある事ではない。
それだけ注目が集まっているという事だ。
特別何かを話すという事はしなかったが、シエルは三人それぞれに無言のまま視線を送り、そして自らの実験が行われるエリアへと連れて行かれた。
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