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辺りにゴミが散らばる道。
そこを複数の少年少女達が街外れに設置されている転移門を目指して走っていた。
息を切らしながら先頭を走る少年に対し、後を付いて来る者の一人が声を掛ける。
「ねぇ、リオン。やっぱりやめようよ。外に出たりなんかしたら・・・」
後ろを付いて来る者の一人がそこまで口にしたところで先頭を走る少年「リオン」が唐突に足を止め、後ろを振り返りながら言った。
「それ以上言うな」
「だ、だって・・・」
「俺達と他のエリアに居る奴等との何が違うって言うんだ?同じだろ?同じ人間だろう?だったら何で外に出ちゃいけないんだ?そんな決まりは無いだろ」
「そ、そうだけど・・・」
「だったら行くぞ。外の世界を見に行くんだ。このゴミ溜めの外の世界を」
「う、うん・・・」
リオンが一同を制し、再び走り出す。
そしてようやく街外れに設置された石の彫刻のような形にデザインされた転移門の前へと辿り着いた。
転移門はこのアルカディアの至る所に設置されたワープ装置であり、同じ転移門が設置された場所であれば瞬時に移動する事が出来る。
リオンが指を動かすと操作パネルが開き、行先を指定しながら自分の背後の者達に確認を取る。
「行先は南エリアだ。皆、準備は良いな?」
他の者達が小さく頷くのを確認し、リオンがパネル上の決定ボタンを押すとその場の全員が光に包まれる。
そして眩い光の中、全員が虚空へと姿を消した。
不安は拭えなかったが、心の何処かでリオンの言っている事に賛同していたからこそ彼等はここまで付いて来たのだろう。
好奇心という己の内から湧き上がる欲求を理性的に制する事が出来る程、彼等は大人ではなかったのだ。
その先に危険が待っているかも知れないと認識しつつも、踏み止まる事が出来なかった彼等は改めて思い知る事になる。
この世界に平等や自由などというものは存在しない。
あるのは何処までも理不尽で残酷な現実だけなのだと。
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