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行先を指定した南エリアの転移門前に光が集まっていき、その中からリオン達が姿を現した。
「うわぁ~。ここが南エリアか。大きいねぇ」
「あたし初めて来た!」
「人もいっぱい居るよ」
初めて目にする数々の光景に興奮を隠し切れないといった様子で各々が楽しそうな事を話しているが、彼等をここまで先導してきたリオンだけは冷静さを保っていた。
周囲を見渡し、すぐさま彼等を道の端っこへと移動させる。
「こっちだ。あまり目立たないように道の隅を行こう」
指示されるまま道の隅に移動する彼等が通り過ぎた直後、一部の者達が不快そうな表情でその後を視線で追って行く。
そしてとある三人が口々に何かを話し始める。
「うわ、何だよアイツら」
「薄汚ぇガキ共だな」
「アイツらってあれだろ?西エリアにあるっていうスラム街の・・・」
行き交う人々の誰もが靴を履き、上下共にしっかりとした服を着ており、綺麗で清潔そうな顔をしている。
対してリオン達は裸足の上に所々が破れた不揃いな服を着ており、顔や手足も黒く汚れている。
服も買えなければ、風呂どころか水浴びすら満足に出来ない貧しい日々を送る不潔なスラム街の者達の事を他のエリアに住む者達は良く思っていない。
まるで自分達とは違う全く別の生命体を見るかのような蔑んだ目で見てくる。
リオンが極力目立たないように行動しようとしていた理由はそれだ。
この場の誰もが周囲の目はそういうものだと割り切っているが、実際にああいう目をされるのはやはり辛いものだ。
「おい!うちの店のもん盗みに来たんじゃねぇだろうな!?さっさと失せろクソガキ共!!」
ただ店の前を通っただけでこれだ。
金の無いスラムの者達が店にやって来るのは商品を盗む為。
実際一部にはそうした者も居るようだが、こうしたイメージが定着し、全ての者が同じだとひとくくりにされたのではたまらない。
だが、ここで何かを言い返せば面倒な事になるだけだ。
リオン達は無言のまま軽く頭を下げ、足早にその場を後にするしかなかった。
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