エンブリオ - Darkside Chronicles -

ＥＰ２ 弱肉強食

アルカディアには中央エリアを中心に東西南北に分けられた五つのエリアが存在する。

各エリアにはそれぞれの特色があり、毎日多くの人で賑わっているが、唯一人の出入りが少ない寂れたエリアが存在する。

それが西エリア。

西エリアに人が寄り付かない理由はいくつかあるが、一番は西エリアに設けられた施設の数々にその原因がある。

西エリアは全エリアの中で最も土地が安く、敷地を多く必要とする大規模施設の建設に適した場所であり、科学部門が所有する魔素の大規模研究施設やゴミ処理施設等が多数存在している。

しかしこれらは万が一事故が起きた際に外部に高濃度の魔素が漏れ出して魔素中毒になってしまう危険を孕んでいたり、数々の設備が置かれている事から騒音が凄まじかったり、大量のゴミが集められる事から腐敗臭が充満していたりと周囲から敬遠されるような条件ばかりが揃っている施設でもあるのだ。

その為、西エリアに出入りするのは施設の関係者ばかりであり、それ以外の者が近付くという事は少ない。

だが、中にはそうした人目の少ない地域を居心地の良い場所と考える者達も居る。

人目が少なく、大規模な施設が乱立している為に場所によっては非常に視界の悪い所もある為、身を隠すにも困らない。

秘密裏に仕事を行う裏の世界に生きる者達にとっては絶好の隠れ家であり、仕事場というわけだ。

そうした部分に目を付けた裏社会の者達が集まるようになっていった事から西エリアは治安も悪く、今ではますます一般人が寄り付かない場所となってしまったのだ。