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第4話
一方、佐倉はちゃんと会場である大広間にいた。
佐倉の方は一目で涼司に気づいたが、あえて気づかれないように避けながら動いていた。
何の相談もなく、乗り込んで来るなんて。
こんなこっ恥ずかしい姿の時に、わざわざ。
それもあんな、襲ってくださいと言わんばかりのカッコしやがって。
――あとで覚えてろ。
そう思いながら、どんなお仕置きをしてやろうか思案を巡らせるのだった。
小一時間ほど経過しただろうか。突然薄暗闇になり、大きな音楽が鳴り響いた。
「ハイそれではみなさんお待ちかね!トリックオアトリートの時間でーす!」
マイクを持ったミイラ男がテンション高めでアナウンスすると、歓声が沸き起こった。
参加客は大広間入り口で、受付の際にお菓子の小袋を十個手渡されている。それを強請り合う時間のようだ。上手くやれば元手以上に増えるかもしれない。
とはいえ、中身はどうせ小さなキャンディーやチョコ。別に欲しいとも思わない。
軽快なリズムの音楽が流れる中、各々がお菓子をもらいに回る。涼司も、可愛さを武器にお菓子をせびりに来る子ども中心にお菓子をばら撒いた。十個なんてあっという間にはけてしまった。
涼司は特に強請りに回ることはせず、手ぶらになったところでフルーツなどぱくついていると
「trick yet treat」
突然耳元で囁かれた。
背後からまるで銃を突きつけられているかのように、背中に何かが当たっている。
「あーごめんなさい、もうお菓子全部あげちゃって」
両手を上げながら振り返ると、そこには燕尾服にマント姿の、青白い肌に赤い双眸、白い牙を備えた吸血鬼――
「?!」
涼司が強張っていると、吸血鬼は離れて、ふいとどこかへ行ってしまった。
その後もどうしても佐倉を見つけられないまま、パーティーは閉宴してしまった。
すっかり意気消沈して客室に戻る涼司。
――何しに来たんだか。
決して安くはない交通費と宿泊費、そして時間を無駄にした気がして虚しくなってきた。
パーティーの終わり、広間を出る時に一人一人プチギフトを渡された。開けてみると、やっぱりハロウィン包装のキャンディが数個。包み紙の文字を見て、ヤケになる。
何がハッピーハロウィンだ。
どこがハッピーだ。
家にいた方がマシだった。
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