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第7話
すっかりとろんとした目つきになって、股間にも変化が現れた涼司を見て、佐倉は満足そうに笑う。
「どこがオオカミ?誰が襲ってやろうかだって?どうぞ襲ってください、の間違いじゃない?」
「んぅ……」
名残惜しそうに、少し恨めしそうに佐倉を見つめた後、涼司は今度は自分から佐倉の首に腕を回し、紙のように蒼白い薄い唇に自身の唇を重ねた。
佐倉の脚の間に涼司の片脚が割り入り、硬くなった股間を押し付ける形になる。
「じゃ俺はTrick or Treat 」
切なそうに訴える涼司。
「お菓子あげれば気が済むの?」
意地悪く笑う佐倉の下半身へと涼司の顔は下がっていった。
「お菓子はいらんの、これがあるから」
黒く光沢ある燕尾服のスラックスの前をくつろげると、腫れ物にでも触るようにそっと佐倉の竿を取り出した。
まだそんなに見慣れていないそれを、恍惚とした表情でまじまじと見つめた。
「待てよ、勤務ちゅ……」
佐倉が言いかけたところで愛おしそうに唇をつけると、そのまま徐々にはむはむと咥え込んだ。お菓子を頬張るように美味しそうにもぐもぐと味わっていたかと思えば、キャンディーのように舌で舐め上げていく。
涼司の肩に置いた佐倉の手が拳を作り、ぐっと力が入った。
喘ぎ声を想像できないな、聞いてみたいなと常日頃思っているが、やっぱりこの程度では聞かせてはくれないのか。
少し残念に思いながら涼司が極上の『お菓子』を味わい続けていると、佐倉の携帯が着信を知らせた。
「はい、ええ、今?広間の倉庫ですよ。すぐ行きます」
平然と会話した後、とん、と突き放されて、佐倉は淡々とお菓子をしまい込み何事もなかったように業務に戻ろうとしている。
「あ、アヤ、」
涼司が縋るように名を呼ぶと
「仕事上がったらまた来るから待ってて――着替えずに」
その一言にすっかりスイッチの入ってしまった涼司は、ようやく狼らしいギラギラした目つきになった。
「そん時はミルクもちょうだいね」
涼司がニヤリとして答えると、佐倉も横目でニィ、と牙をのぞかせて妖しく笑った。
「バカ」
と言い残し、マントを翻して去って行くその姿は、本物の吸血鬼のようだった。
【おわり】
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