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「臣、見てみ、めっちゃ良く撮れてる!」
予約していた店で本人たっての希望で、誕生日コースをチョイスしていた。帰りに額に入ったケーキを前に撮ってくれたツーショットの写真を貰って、健流はご満悦だ。
「こーいうのって、女子会かカップルで頼むもんだよな」
着こなせてないスーツ姿の二人組が、テンション上がってはしゃいだけれど、晴臣は写真を渡された時、我に返った。
店員も周りの客も、男二人を見て違和感ありありだっただろう。
「女子だけとか書いてなかったし。そんな事誰が決めた?臣、恥なんか一瞬だ。これは一生残る。二人の入社記念日だし、俺の誕生日だし。部屋に飾ろーな。あ、携帯の待受にも」
「健流……」
鋼のメンタル健流は全く意に介さず、この誕生日に喜んでいて、とりあえず良かったと思うことにした。
健流の携帯は食事中も鳴りっぱなしだった。正確にはマナーモードにしてるから、震えっぱなしで。交友関係が広い健流に皆、誕生メッセを送って来てるんだろう。
健流は晴臣と食事しているときは、一度も見はしない。
「なあ、健流。もう帰り道だし、俺に気にせず返信しなよ。皆健流にお祝い言ってきてんのに」
「あー寝る前にでもする。今日は、今日だから、臣とだけ居たい。今年も二人で居れた」
珍しく真面目な凛々しい表情で告げられた。
春の夜風に吹かれ、街灯に照らされてる健流は二十二年経っても、綺麗だと見惚れる。
「なあ、臣……俺ってすごいだろ」
(あ、始まった)
夜道に紛れて、晴臣から健流の手を繋ぐ。
(恒例の……)
分かっているけど、尋ねる。
「すごいって、何が?」
「だから、俺、予定日より早かったんだ。俺、早く生まれて来たかったんだ、今日に。絶対」
(毎年聞く、この話)
だけど、晴臣は毎年聞き入る。
「一日遅かったら、一個下だった。スゴいだろ。今日生まれたから……臣とずっと同い年でいれた!」
健流は繋いだ手をブンブンと振って、ガッツポーズする。
「だから俺は、生まれおちた瞬間から、臣と繋がってんだ」
「健流…誕生日、ほんとにおめでと」
ー入社日兼誕生日おしまいー
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