はれおみ

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慣れない会社勤めが始まって、早二ヶ月。 ゆっくり出来る休みの土曜だけれど、晴臣はいつもより早くベッドから抜け出し、窓に張り付いた。 「やっぱり……」 重暗い色が何重にもなった雲から舞い落ちた雨粒が、窓ガラスを叩きつけている。 晴臣は、トボトボともう一度ベッドへと戻る。 ベッドに潜り込むと同時に、寝ていた筈の健流に抱き締められた。 「臣、降ってた?」 「うん」 健流に上から乗られ、重みで声が途切れた。だけど、一言同士でも、全て二人の中で伝わってる。 まだ眠そうな健流に、頭をワシャワシャ撫でられた。 一度も晴れない、晴臣。 (何の取り柄もないのに、その上俺は本当に、雨男だ) 晴臣は改めて落ち込んだ。 再び目を閉じると、さっき見たときパラパラと小降りだった雨が、しっかりとした雨音に変わり耳に響く。 また睡魔に呼ばれて眠りに落ちようとしていたけれど、唇の暖かい感触で少し目を開けた。 健流に今年も朝一、口付けられていた。 ファーストキスは、小学3年生の今日。 健流からだった。   *  *  *
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