唯一が二人になった時

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学校帰り、いつも迎えに来る健流の姿はなかった。 健流にだって、付き合いは有るし用事もある。 居ない日があっても、当たり前だとは頭で解っていても、晴臣は少しがっかりして、一人で帰った。 今日の事、早く報告がしたかった。 さぞかし一緒に喜んでくれるだろう。 家に帰り、ご飯とお風呂を手早く済ませ、自室に入って晴臣は、健流が現れるのを待った。 だけど、結構な時間が過ぎても、ベランダの窓は開かなかった。 (健流、来ないのかな) 勉強が手に付かず、ベッドの上でゴロゴロとしながら健流を待ちわびている内に、晴臣は寝入ってしまった。 物音でふと目が覚めた時、ベランダから吹く風を感じた。 (健流が来た?!) 知らない間に自分で消したのか記憶はないが、部屋の明かりは消えていて、暗くてよく見えない。 電気のリモコンも見当たらない。 「タケル?」 呼びかけた声に応える様に、ベッドが沈んだ。 「臣……起きたんだ」 暗い部屋の中、漸く目の前に健流の姿を捉える。 「あぁ、待ってたんだ。健流を。待ちくたびれて、寝ちゃったけど」 晴臣は自分を笑った。けれど健流の笑い声は聞こえなかった。いつもこんな時は一緒に笑ってくれるのに。途端に不安になる。 「ねえ、健流」 「あぁ、聞いてる」 声は聞こえるけれど、ちょっかいかけてくる手も伸びては来なかった。 代わりに晴臣が良く見えない中、闇雲に手を伸ばし、健流の存在を探った。 健流の身体のどこかを漸く掴み、体温に感触にホッとする。 「健流、聞いて! 俺、触られても大丈夫な人が居たんだ!誰だと思う?あの樹!樹に突然今日たまたまだったんだけど……平気だった!」 「そうか」 一緒に喜んでくれると思っていたのに、目には見えないけれど、健流の声色は明らかにそんなテンションではなく、晴臣は驚いた。 「健流……なあ、どうしたんだよ」 返事を待った瞬間、晴臣の目が回った。暗闇の中、自分が何がどうなったか解らないけれど、ベッドの振動音と背中の痛みで、押し倒された事を知る。 驚いて見開いた目には、真っ暗な見慣れた天井と迫ってくる健流の姿が飛び込んできた。 健流の瞳だけが鈍く光っていて、その見た事のない光に囚われて晴臣は動けない。 身も心も固まっている間に、唇を塞がれた。
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