唯一が二人になった時

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「んんっ!」 小学生の時から続いていた、触れるキスとはまるで違い、晴臣は声にならない悲鳴を上げる。 口をこじ開けられ、何度も角度を変え侵入してくる物が、健流の舌だと理解したのは、絡めとられた後だった。 息苦しくて、意味が解らなくて、晴臣は力の入らない腕で、健流の身体の何処かを何度も叩いた。 「はぁ、っ」 「………」 漸く解放され、思考もままならないまま肩で息をする。 「た、健流! なに、こ……れ」 「臣、今日嬉しかった?」 健流の声が聞こえてきた。 「きょう?」 「今日、樹の事、嬉しかったか?」 「そりゃあ……」 「そうか……樹に触られて嬉しかったのか……良かった、な……」 健流の声は震えていた。 さっきの行き過ぎたキスの出来事も、意味が解らず聞きたかったのに、健流の声と言葉が心にひっかかりどうでもよくなった。 「違う、健流」 (健流は誤解してる) 「健流、聞いて」 (樹に触れたのが嬉しくて大丈夫だったんじゃない。触られたのが平気だった事が、嬉しかったんだ) 言葉にしていない健流の事だけど、長年の付き合いだ。様子で解った。 (多分、健流は嫉妬して傷付いてる。勘違いなのに) 今まで自分だけが大丈夫だと思ってきて、その自分さえもいつダメになるか不安で問い掛けてきた健流を思い出す。 そんな状態なのに突然、大丈夫な奴が現れて、晴臣は喜んで……思い起こしてみて晴臣自身、自分の言動の浅はかさに歯噛みした。 単純に出来事を伝えれば、一緒に喜んでくれると思った浅はかさ。 (心のどこかでずっと前から気付いていた癖に) いつも全身全霊で、自分を助けてくれた健流を蔑ろにし、傷つけた。 今まで幼馴染みの延長線上で、関係をあやふやにしてきて、健流の思いに気付かぬふりをしてきた。 自分に都合が良い様に。 身を起こし、きちんと話そうと晴臣は気持ちを立て直しかけたのに、健流に身体を再び沈められた。
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