唯一が二人になった時

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健流の部屋の窓は閉まっていて、カーテンの隙間から何とか様子を伺いしれた。 晴臣は恐る恐る覗き込む。 (健流、何してるんだ?) 「えっ?!」 晴臣は目を凝らした。見間違いかと思った光景。 カバーがかかったピアノに向かって、一人ご飯を食べていた。 健流に来たことを知らせるのに躊躇をしていた癖に、その様子を見て晴臣は、無意識に窓を何度も叩いた。 物音に気付き振り返った健流は、晴臣の姿を見て、声が聞こえてきそうな程驚き、瞬間血相変えて飛んできた。 「オミ!?なんで、ここに、居る」 「俺、健流に会って、話が……」 「あそこ、渡って来たのか?!何考えてるんだ!危ないだろ?!馬鹿!!二度とするな!!オミにもし何か遭ったら!」 「健流こそ、ずっと小さい時から、殆ど毎日渡ってるじゃないか」 「俺は良いんだよ。大丈夫だから」 健流に久々に怒られて、根拠のない自信の発言も聞けた。ベランダを越えた時から続いていた足の震えが漸く止まる。 「健流こそ、何してるんだよ?」 晴臣は窓越しに見た不思議な光景に再び目をやる。細長い机と化しているピアノに、一人分の食事が置いてある。 「飯食ってた」 健流は当たり前かの様に答えた。 「一人で?おばさんとおじさんと妹は?」 「今日は、外食の日」 「健流は、行かないの?」 「勿論俺もいつも呼ばれるけど、今年一応受験生だし、勉強するって言った!」 「そうなんだ……」 聞きたい事が湧き出てきたけれど、晴臣は口を噤んだ。
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