唯一が二人になった時

13/13

51人が本棚に入れています
本棚に追加
/72ページ
仲直りの後、健流の部屋のベッドでした、初めての行為は……めちゃくちゃだった。 セックスなんて到底言えない代物で。 指と違って挿入が上手くいかず、何度も悪戦苦闘し、試みては失敗した。 それでも何とか、途中から投入したハンドクリームの匂いにまみれて、痛みしか感じず、だけど漸く二人繋がった時 「大丈夫、か?」 「だ……大丈夫じゃ、ない!!!」 問い掛けられたいつもの言葉に、晴臣は初めて全力で否定した。 冷や汗と、ハンドクリームと、繋がる前に放った物にまみれながら、何故か同時に笑いがこみあげ、一緒に笑い合った。 繋がった後も、健流は動かず衝き上げもせず、ただ、じっと二人で抱き合っていた。 健流は、晴臣が恥ずかしくなるほど愛おしそうな目で見つめ、晴臣の身体中にキスをした。 「健流ただいまーーー!」 「健流君、お土産買ってきたわよ!」 玄関が開く音と、声が微かに聞こえ、一瞬のうちに、二人我に返った。 健流が返事だけをして、布団を二人引っ被り、繋がっただけで、何もしなかった性器を健流は慌てて抜き、暗闇の中手探りで晴臣は下衣を履いた。 布団の中、怯え慌てながらゴソゴソ証拠隠滅していると、頭同士ゴツンとがぶつかって 二人痛みを堪え声を押し殺して、また笑い合った。 快感一つ得ることも無く、色気もムードもなく、二人共幼さそのままで、格好悪い事この上ない初体験だったけれど 紛れもなく、今までと違う関係になった証を、互いの身体に刻み込んだ行為だった。   *  *  * その後、健流が晴臣の部屋に再び訪れだし、受験の合間のスキンシップの行為はエスカレートしたけれど…… 最後までは、あの日以来しなかった。 ちゃんとしたセックスをしたのは、高校生になってからだ。 「今でも笑える。一生、笑えるよ」 晴臣はあの日を思い出し布団に潜り、健流に抱き付き、声を押し殺して思い出し笑いした。 -おしまい-
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加