会社の話 3

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いつまでも、子供じゃない。社会人になってからは余計に、思う。 最近は特に、自分の事は自分の中で解決しようと心がけていたのに。 予想外の出来事の対処が思い付かず、晴臣は考えあぐねていた。 「臣、元気ないな」 「いや、別に」 「何か有った?」 「何にもーー」 健流に不意打ちな言葉を掛けられ、晴臣は咥えていた吸って食べるアイスの容器の先を、無意識にガジガジ噛んだ。 二つくっついた小さなボトル型のアイス。 小さい頃から、パキっと切り離して二人で食べている。 今も冷凍庫に常備して風呂上り二人で分けて、いつまでも子供じゃないといいつつ、未だに二人並んでチューチュー吸って食べている。 「ふーん。その顔はまだ断ってないのか」 「は……!?」 健流が神妙な面持ちでぽつりと呟いた言葉を聞き、晴臣は瞬きを忘れるほど驚き、口からアイスを落としかけた。 「本間(ほんま)部長」 「なななんで?」 今現在、目下の悩み事の名前を健流にズバリと言い当てられ、驚いた。 本間部長に会って話がしたいと誘われた。社外で。 「なんでって、知った理由は前回と以下同文だ。どうするんだ?日に日に言い辛くなるぞ。さっさと断ればいい」 健流は晴臣に告げたと同時に、空の容器をゴミ箱に投げ捨てた。 「そんな、簡単に言うなよ。断る理由思い付かないし、ただ話すだけに決まってるだろうし……」 何もこんなに悩む事はない。ただ、上司に誘われただけだ。 健流にはそう言えるのに、部長には行きます、と返事出来ない自分がいるのも事実で。 「でも、万が一違ってたら、って臣だって思ってるんだろ? だから即答できてない。結局そんな案件、断るしかない。答えは出てる。」 健流はいつも昔から悩み事はほぼ存在しなくて、明晰な思考力で一刀両断だ。 優柔不断で臆病な晴臣には羨ましい位に。しかもその判断は結果間違えてはいない。 だけど、誰しもそんな風にやっていける訳じゃない。 (部長に上手い断り方も考え付かない。断った所でまた誘われたら……そもそも手のかかる新人を純粋に励ましてくれるだけだろうなのに。自分たちの様に同性を性的対象としてだなんて。そんな、稀に) ふと脳内で消去している事が蘇り、晴臣は抱えていた膝に顔を埋めた。 「本間部長、40代後半、随分前にバツイチ。温厚、頭は切れる。社の信頼も厚い。 ただ、過去にも特定の社員に対して懇意な関係に……な噂あり」
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