会社の話 3

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突然ペラペラと喋りだした内容に、晴臣は目を見開いた。 少なくとも健流より接触している筈の本間部長の事、だけど晴臣が知らない事を健流は知っている。   「まあ、その噂は殆どの社員は知らない。流石トップオブザお局、西野さんだ。あの人に秘密握られて嫌われたら、どんな偉い上司より怖い」 健流はケラケラ笑いだした。 健流に反して、晴臣は全く笑えなかった。 西野さん。確かに情報は知ってそうな位の貫禄の女性。だから余計に避けて晴臣は近づいたことも無い。 「健流、あの西野さんとどうやって話したの?本間部長の事、聞いたのか?」 「まさか、本間部長の事聞き出しにだけ西野さんに喋りに行く訳ないだろ。そんなもろバレな事、誰がするか。 挨拶する時の感触で、俺にアタリは良さそうだったから、仲良くなった。これからも色々お世話になるだろうし。 天気の話と並列に、徐々に他の上司の話も含めてな。会話の流れで向こうから教えてくれた。新入社員が、偉いさんの事を会社のベテランから教わるなんて珍しい事じゃないだろ。 喋ってみると可愛くて良い人だよ。飯行っても若い先輩や同期の女子みたいにモーションかけてくること無いしな。俺とどうこうなろうなんて思って無いから逆に接しやすい。お喋り好きだから聞き役になれてこっちは要らない事言わずに済むし。 まーそのかわり、西野さんが会社では内緒にしてる、今夢中なアイドルの話も同じ位聞かなきゃいけないけど。それも面白い。俺がそのメンバーの中の誰かと似てるらしーわ。な、可愛いおばさま……いや、おねーさまだろ?」 健流の話を晴臣は、口をあけたまま聞いていた。懐柔度が同じ日に入社したとは疑うレベルだ。 「その本間部長の、今まで懇意にしてきた噂の社員達は……性別問わず。だと。まー誰かとまでは聞かなかったし辞めてる感じかもだしな。 だけど、女に手を出して噂になったり騒ぎ出したら、いくらうちみたいなアットホームな会社でも流石にクビが飛ぶ。女性を贔屓したら他の女性が許さない。社内で女性の敵を作ったら、致命傷だ。でも本間部長は、今も確固たる地位を築いている。相手が騒がない、噂にならない。自然な関係に見られる。答えは出てるだろ、臣」 「……」 「臣がもし断れないんだったら……」 -おしまい- 
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