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「どうしよう! 樹!!」
_「晴、どうした? また健流が何かしでかしたか?」
(流石樹、察しが)
晴臣は気が動転したまま電話を掛けたが、樹の説明不要な理解力に感謝した。
「そうなんだ。ていうか、健流がしでかすというか、あー、えっと……」
何処から説明すればいいのか糸口が見つからない。
_「落ち着け、晴」
樹に宥められ、とりあえず深呼吸した。
「健流が、俺の代わりに上司に会いに行くって」
_「?話が見えんな」
樹がシンキングタイムから無言になった。そりゃ訳が分からないだろう。晴臣は起こった出来事をそのまま話してしまった。
だけど、話したそのままだ。
* * *
部長の会話をした翌日。
今日の土曜日が誘われていた日、当日だった。
「まだ返事してないんだろ、どうせ」
「……」
「初っ端から土曜日の夜に会おうって言う方も大概だけど、それに何も質問もしないでOKしたら、ほぼ受け入れたと思われても仕方ないと思うけど」
「……」
「土曜の夜に誘うか。本間部長、流石腹座ってるな。格好いいしな。自信もあるんだろうな。すごい人だ!」
健流は人の心知らず、愉快気に笑っている。
「臣、とりあえず、【ハイ】ってだけメッセージ返しとけ。……俺が代わりに行く」
「え?! た、健流?!」
まるでコンビニに行くと告げる様な軽さで、健流は晴臣に答えた。
「そんな思い付きで適当な事言うなよ!」
「思い付きなんかじゃない。結局こうなる気はしてたから。前から考えてたから、大丈夫」
「大丈夫って、何が大丈夫なんだよ?!」
「俺を信じて帰り、ちゃんと寝て待ってろ。臣はもうこの事で悩むな。それが今のお前の仕事だ」
そう健流は力強い目で言い切ると、晴臣が2文字の返事を打つまで傍を離れなかった。
晴臣が促され、不本意ながら言われたとおりに送信まで押した事を確かめると、健流は不安を全身で表している晴臣を、ギュッとハグし音を立ててキスをし
「じゃあ、行ってくる!」
と元気一杯な声を残し出て行った。
* * *
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