遅れてきた反抗期

3/14

51人が本棚に入れています
本棚に追加
/72ページ
噛み砕いて、樹に説明した。 「樹の言う事なら聞いてくれるかもしれない!悪いんだけど、健流に連絡して止めて欲しい」 藁にも縋る思いで、晴臣は樹に頼んだ。いつも行き過ぎた健流を一喝してくれる、健流が耳を傾ける唯一の理解者であり第三者だ。 _「健流が大丈夫って言ったんなら、俺も健流を信じた方が良いと思う。当事者より人に任せた方が上手くいく場合もある」 樹の返事は意外な物だった。 「樹、健流の肩を持つのか?!」 _「晴、気持ちはわかるが本当に落ち着け。自分でどうにもならない事もある。今回は健流に任せてみろ」 「……だから、それが俺は!」 晴臣は携帯を握りしめた。自分で返事一つ出来なかったせいだ。 己の事情を鑑みれば行く事は、出来ない。 良い理由も次の対処も思い付かなければ、上司に嫌われたくないから無下にも出来ず愛想を振って、この有様だ。一人で対処すらできない。 「まだ俺は、健流に頼って手を借りて、自分の事何一つ……」 _「晴、お前が間違ってる」 「樹?」 _「そんな考え、自立心なんて言わない。どうして健流と支え合わない?健流に頼りっぱなしが嫌だと思うなら、今度は違う形で健流を支えてやればいい。その役目ならいくらだって有る筈だ。今のお前の考えは、ただの自分に対する劣等感と意固地なプライドだ」 いつも優しく、自分の味方だと思っていた樹に、一番痛い所をズバリと突かれ、晴臣は言葉が出なかった。 「これだけお前にキツく言うのは何故だと思う?晴に、あの時と同じ目に遭って欲しくないからだ。 お前の 反抗期 だった時に起こったあの事。忘れてはないだろ?だから今日も、自分で行けなかったんだろ?まだ健流に”反抗期”は続いてるのか?」 樹には、健流との詳細な関係を明言していない。だけど、黙って察してくれている。そんな長い付き合いの中で、起こった出来事。 その当時、晴臣の異様な様子で毎日会っている樹には隠せない出来事が有った。 勿論その詳細も告げてはいないが、出来事の概要は樹も知るところだ。 思春期時代、晴臣は親にも起こさなかった反抗期。 それが、大学時代にやって来た。健流相手に。 樹に「遅れてきた反抗期、だな」と揶揄されていた、大学二年の頃。 晴臣も、ここ最近何度も思い出した。だから今日も行く事が出来なかった。 「……覚えてるよ」 晴臣は樹の言葉に項垂れた。   *  *  *
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加