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時間の観念も無く、晴臣は繁華街の歩道の縁石に座り込んでいる。
道行く人を感情無く見ながら、街に住み着いている群れの様に、ほぼ地面にしゃがみこんでいる。
何時間経ったのかも解らない。
自宅から離れた滅多に来た事のない、繁華街。
晴臣が立ち上がれずに膝から崩れ落ちてから、初めて時計を見た。
日が変わるほど深い時間になっていて、かなりの時間が経っていると漸く認識する。
かと言って、晴臣には立ち上がる気力もなかった。
「……え?」
見知らぬ街で、視界に入る景色に何一つ見覚えのない中、人生で一番見た姿が、近づいてきて晴臣は目を疑った。
「オミーーーーー!!!」
何かの間違いじゃ、と思う間もなく、健流が大声上げながら、晴臣に向かって全速力で向かって来る。
反射的に逃げようとしたけれど、長時間固まった足は動いてはくれず、気持ちと上半身だけ、近づいてきた健流から背けたが、簡単に健流に捕らえられた。
「オミ! あぁ!!」
周りの目も気にせず、健流もしゃがみ晴臣を抱き締める。
「な……ん、で……健流」
健流には一度も連絡していない。着信は一杯あったんだろうけど、携帯も見ていない。
連絡したかったけれど、出来なかった。
何故、目の前に健流が現れたのか、夢幻のようだ。
「GPS」
「ジ……」
「そう、前オミが携帯何処に置いたか解らなくなった時あったろ。そん時登録した。あんまりにも連絡取れないから、心配になって場所調べて来た。
一応言っとくけど、今まで一度も使った事は無いからな!!」
息を弾ませながら、健流は晴臣に告げた。
「は、」
(健流は、俺の位置情報まで把握出来てるのか……)
何か言おうと思ったけれど、今は何も言葉は出て来なかった。憎まれ口も、恨み言も出て来ない。
そんな体裁より、今はただ、健流に会えて安堵と嬉しい気持ちしか、湧き出しては来なかった。
「ずっと場所が動かなかったから、オミの携帯だけがここに有るんだったらどうしようって、来るまでは焦った。
でも…オミの姿が見えて……あぁ、良かった!!」
健流の感情がダイレクトに伝わるほど、髪を無茶苦茶にかき乱され、撫でられた。
「立てるか?」
晴臣は、ゆっくり頷いた。
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