遅れてきた反抗期

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二人歩き始めた頃、もう日付は変わっていて、家に帰る手段は無くなっていた。 健流は、晴臣の腰に手を回し、身体を支えた。回した手は繋がれていて、決して離そうとはしなかった。 普段なら晴臣は振り払うところだけど、そんな力もないのと、泥酔した友人を介抱している姿として夜の街に同化し紛れている。 二人三脚の様に歩を進め、逃れる様に足を踏み入れたのは、歓楽街から道一筋ずれた所にあるラブホテルだった。 晴臣は初めて来る世界に何度もあたりを見回したが、健流は慣れている様だった。 受付も、室内も晴臣にとっては物珍しく、そのお陰か欝々としている気が逸れた。 健流が選んだ部屋に入る。 屋内に二人の空間という状況になって、奇異な場所に二人居るのに、晴臣は漸く落ち着いた。 「……健流、こういう所、良く来るのか?」 「いや、自分では来ないから!連れて来られる時だけだ。勘違いすんなよ!」 自分の意志では来ない事を、真っ当に説明してくる健流に晴臣は「そう」としか返さなかった。 健流にそういう関係の女を作れと望んだのも自分だ。それに、そんな事も今はどうでも良い。 とりあえず、ベッドに座らせようとした健流の手を晴臣は振り払った。 「口、ゆすぎたい……」 晴臣はフラフラとシャワールームらしい所を目指した。 同じ足取りで帰って来た晴臣は、見た事のない大きなベッドに倒れこんだ。 味わったことのないスプリングに身体が揺れたけれど、抗いもせず身を任せる。 その隣に、健流がなだれ込んで来たのがベッドの沈みようで感じた。 「何が、有った?」 健流は晴臣の顔を、見つめている。気配で感じたけれど晴臣は顔を向けず、見慣れない星が瞬いている天井をただ見上げた。 *  *  *
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