遅れてきた反抗期

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薄明りの中、晴臣は浅い眠りと目覚めを繰り返し、三度目の目覚めで、不安たまらず晴臣から健流に抱き付いた。 「どうした、臣」 (健流も眠っていなかったのか?) 寝ていると思っていた健流は、目を閉じていただけなのか起きていた。纏ってきた晴臣を瞬時に見つめてきた。 「触って大丈夫、なのか?」 久しぶりに聞く健流の言葉だった。 「何が?」 「やらしいことされて、吐いたから」 抱き締め返そうとしただろう健流の手が、宙をさ迷っている。   「大丈夫に決まってるだろ!」 健流の久々に聞く不安そうな声色に、晴臣は何故だか泣きそうになった。 「ていうか。健流も俺に触って大丈夫なの?」 「どういう意味だ?」 「先輩にキスされて、やらしいことされたから……そんな俺、触りたくなくなったのかなって……」 晴臣から本音が零れ落ちた。 不安で眠れなかったのは、今日襲われかかった恐怖心と、隣で触れて来なかった健流に感じた焦燥感。  「臣!!」 急に健流が体を起こし、晴臣に覆いかぶさって来た。 突然視界が健流で一杯になり、鈍く光った健流の瞳に射抜かれ吸い込まれそうになる。 「俺を、(あなど)るな」 掴まれた手首がじりじり痛い。 「俺の、臣への想いを……侮るな」 意味が解らず聞き返そうとした晴臣の唇は、健流に塞がれた。 四肢を押さえつけられた勢いとは裏腹に、壊れ物に触れるような優しいキス。晴臣の不安が少し薄れる。 離れる瞬間、唇を舐められ痺れた。言葉が出ない晴臣を余所に、健流が口を開いた。 「お前、勘違いしてるかも知れないけど……俺は、臣がこれから女,男…俺以外の奴と何をしようが、構わない。そんな事で、俺の気持ちは何も変わらない。臣がちゃんと相手が好きで、触られる事も平気なら。 だけど、相手がクズで臣が傷ついたり不幸になるようなら、話は別だ。そうじゃないなら、臣が百人と寝ようが、ビッチになろうが、そんな事で臣の価値は何ら変わらない。俺の中で臣は、臣だ」 「……」 「ただ、そうなってもお前の中で、俺の存在を、居場所を、別次元で置いといて欲しい。俺が望むのはそれだけだ」 健流は「頼む」と呟きながら衣擦れの音をさせ、身体を震わせた後、晴臣の胸に顔を埋めた。 健流から初めて聞く心中に晴臣は動揺しながらも、ぼんやり中学の出来事が思い出されていた。
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