遅れてきた反抗期

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――健流以外触れられても大丈夫な相手が樹だと解った時。 ショックを受け傷付きながらも、翌日『臣を頼む』と樹に告げていた。 その後、晴臣に『もう触らないから傍にだけはいさせてくれ』と懇願して来た。 『生きるのがキツイ』、と言った。 「樹……」 記憶の渦に飲み込まれていると、晴臣は無意識に登場して来た名前を発してしまい、慌てて口を押えた。 「樹?」 「いや、違、」 「樹は、もうダメ。許さない」 意図しない発言で勘違いされ、機嫌を損ねるかと思ったが、健流は笑って言った。 「臣に『樹に触られるの大丈夫』って嬉しそうに言われた時、めちゃくちゃショックで嫉妬したけど、樹なら仕方がない、いいかとも思った」 「いや、だから、違う」 「解ってる。聞けよ。だけど、今はもうダメだって俺は思うから、止める。臣が傷付くから。樹は臣にとって、最高の友達だ。俺には、なれない。もし関係持ったりして樹が臣の友達じゃなくなったら、臣はダメになる。だからそうならない様に、全力で止める」 「健流……」 「あの先輩も、人によって表裏あるって良い噂聞かなかったけど、臣には良い人だろうし。 先入観植え付けてもだし、俺自体嫉妬心で客観的に見れてない気がしたから言わなかった」 「そうだったのか……」 「でも、臣は行って、こうなって良かったんだ」 「な、なんでだよ!?」 「俺がいくら言ったって、臣は腹立つだけだったろ? もしかしたら先輩は良い人で臣も好きになって上手くいったかもしれない。それを邪魔する権利は俺にはないから止めるのはもう一昨日で諦めた。 自分で経験してこそ判る事って、あるだろ。百聞は一見にしかずだし。だけど、同じ過ちは二度と繰り返すな。な?」 「約束な?」と耳元で囁いた後、健流は漸く晴臣を抱き締めた。健流の話は、今まで本音を知る由もなかった晴臣には深すぎて胸が軋む。 やっと与えられた感触、体温を言葉と共に受け入れ、晴臣は必死に「わかった」と頷いて、健流にしがみついた。
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