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「たける……たける……」
名前を何度も呼び、晴臣は冷え切っていた心身を擦り寄せ、体温を分かち合う。
「臣……する、か?」
「うん」
晴臣は初めてのラブホテルで、結局した。
家と違って声に気を遣うことも無い。
弾みの良いベッドで衝き上げられながら、普段の様に抑えることなく素直に感情を表した。何より健流に貫かれた時、一つになれたと安堵した。
涙と快感といろんな気持ちがぐちゃぐちゃになった自分の顔を、セックスしてる姿を写し出すベッド横の大きな鏡で見てしまった。
自分が行為をしている姿を初めて見たのも驚いたけれど、我ながら酷い顔だと瞬間我に返り、羞恥に耐え兼ね覆いかけた手を、健流に括られ遮られる。
「隠すな。可愛い、臣可愛い」
何度も言われ、健流から顔中キスの雨が降る。
ベッドの上でいつもの様に汚れを気にすることも無い。
さんざんお互い放って、垂れ流して、汚れにまみれて抱き合った。
こんな有様になったのに、やっぱり気持ち悪さなんて微塵も込み上げて来ず、吐き気も皆無で
逆に心地よく、そのまま朝まで汚れたまま抱き合って寝た。
朝、一緒にお風呂に入って、泡まみれになり昨日の汚れ,全てを洗い流して大はしゃぎした。
一泊分は割り勘で二人話が付いたけど、延長料金の払いはじゃんけんで決めた。
本気のじゃんけん勝負で、一喜一憂した。
「また来ような!もっと面白い部屋ある所あるし!今度」
笑顔で言う健流の頭をはたきながら、部屋を出る寸前健流の腕を晴臣は掴んだ。
「健流」
「ん?」
「帰ってすぐGPS、解除しろ」
「解った、解った」
「それから……えっと……」
「臣、どうした?」
「本当にごめん、有難う。GPS使わせる様な事は、もうしない。
もう二度と、同じ間違いはしないから。約束する」
「解った、か?」
「うん、約束する」
ドアに健流を釘付けて、晴臣は小指同士を絡めて頭を下げた。
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