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「オミ!! ただいま!!」
日曜の早朝、晴臣のマンションのドアが元気よく開くと共に
健流の叫び声が聞こえた。
「……タケル!!」
晴臣は寝室から飛び出した。
樹に電話で諭され寝ようと試みたが、結局一睡も出来ずに待っていた。
「お帰り!!話は、大丈夫だったのか? 俺、心配で……」
晴臣は走り寄った勢いそのまま健流に抱きつき、肩口を涙で濡らす。
「あぁ、心配すんな。話はついた。それに、やっぱり俺が行ってよかった。俺は本間部長とちゃんと話する機会今まで無かったから、話したい事もついでに話せたし」
「良く判らないけど……でも一晩も連絡なしに帰ってこないだなんて、酷いよ」
「臣、心配かけて悪かった。だけど本間部長の手前、携帯を弄る訳にもいかないだろ。朝起きて帰る時は、早かったから臣寝てると思ったし」
「え、朝まで本間部長と一緒に、居たのか?」
「うん! そうだけど!」
少し眠そうな顔だけれど、健流は晴臣に満面の笑みを返した。
「うそ……」
「なんでだよ。泊ってなきゃ、とっくに帰ってる」
「何、してたんだよ」
「ん?何って……話して、酒飲んで、映画見て、そから」
指折り数えながら、平然と話す健流の顔を見て、晴臣は驚きすぎて、涙も引っ込んだ。
「嘘じゃない。ほんとだって」
「何も、無かったのか?」
「『何も』って?」
「揉めたり、叱られたり」
「あぁ、最初はそりゃ……な。でも解ってくれてからは、大丈夫。思った以上に、話の分かる出来た人だったー。心配すんな」
「臣は一言、【すみませんでした】ってメールだけ入れて。
明日、月曜何も気にせず、普通に出社しろ。部長との関係も今まで通りだ。もう、誘われたりはしないから、安心しろ」
健流は寝癖の付いた晴臣の髪に指を絡めながら、優しくキスをした。
(信じて、良かった。本当に出来た、人だった)
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