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晴臣に返事した事に嘘は無く
ルームサービスのメニューを手渡してくれた後、本当に二人で映画を見ながら酒を飲んだ。
映画は余りに静かな空気に耐え兼ねた、本間部長の配慮だったが、「お気に入りだ」と言う映画を配信から選んでくれた。
難しい内容だったけれど、内容も濃くストーリーが目を離せず見ごたえのある作品で
見終わった後感想を述べ、それを元にまた話が広がり、部長の趣味嗜好も知れ、感想を「ほぼ同意だ」と褒められ、健流はまた喜んだ。
健流が無邪気に喜ぶ顔を見ても、本間部長はもう呆れもせず、薄く笑っていた。
健流は、アルコールを受け付ける自分の体質にも心底感謝した。
この状況、飲めると飲めないとでは大違いだ。酔いは空気と場を和らげてくれる。
メニューに載っている物で「好きな物を頼め」と言われても、殆ど見たことの無い酒種で、健流は正直に「解らないのでお任せします」と答えた。
本間部長は黙ってルームサービスを頼み、勧められるがまま、酒と肴になる食事を頂いた。
ミドルエイジの独身貴族の力を見せつけられたチョイスは、健流にとってどれも勿体ない程の美味で、感じるがままに大喜びし、絶賛した。
本間部長はその姿を見て、健流より先に笑顔を浮かべていた。
映画も終わり、会社についての為になる話も一頻り聞き、酔いもかなり回り……
夜も更け、酔った二人、妙な空気に包まれた。
隔絶されたホテルの一室。
切り出したのは、健流だった。
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