Are you kidding me?

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Are you kidding me?

えーと。まずは、どうしたらいい?風の音が五月蝿いくらい耳に響く。 地面までは、見えてる限り、まだ当分先に見える。 「しょ……じゃない。フィー、どこだあああ!」 翔太(しょうた)は俺に分かるように、いつもの名前でプレイしてるはず。だけど、今の所は反応がない。というか何をどうしたらいいんだ。何も分からん。 その間にも、どんどん俺は落下していく。 「ログインして直ぐにHP0(ロスト)すんのは嫌だあああ!」 いくら叫んでも状況は変わらず。何かそういうスキルでもあるのか? 自分のステータス的なのを見る方法も、まだ言われてないから分からん。 あと数秒で地面にダイブできそうになってきた頃に、近くに人が見えた。 「あ、そこのひと!助けてえええええ!」 「来たね、ロディ。ようこそ、そのまま突き刺さっておいで!」 「どぉいうことおおおお!?」 俺はそのまま地面にダイブした。のだが、痛くはなかった。埋まっては居るけど。 「よし、ロディも最初の洗礼を受けたね。良かったよかった。」 「よくねえ‼出して!助けて!」 「はいはい、ちょっと待ってねー。」 フィーに引っ張って貰い、ようやく地面から抜けたところで、ため息をつく。 「フィー、何なんだこのゲーム。最初っからひどくねぇ?」 「あはは。製作者がちょっとイタズラ好きでね。最初の洗礼なんだ、これ。  勿論HP0(ロスト)する事はないんだけど、VRだから怖いじゃない?  それを狙ってイタズラしてるみたい。正式サービスでやるかは未定だってさ。」 随分たちの悪いイタズラだ。高所恐怖症だったら速攻でやらなくなるぞ。 「はー……。ま、いつも通り宜しくな。フリー。」 「うん、此方こそ宜しくね、メロディ。」 合流は出来たから、まず行くのは冒険者協会かな。と思ったけど、フィーを見ると革っぽい鎧を着ていたりして、いかにも駆け出し冒険者って見た目なのに対して、俺は白っぽい布の服に黒っぽいジーンズみたいなズボン。 「フィーだけズルくない?何かカッコイイじゃん。」 「これは後で貰えるから。でも、ロディ次第ってのはあるかな。」 「俺次第?」 ちょっと拗ねてると面白そうにフィーが笑った後、ちょっとだけ真面目な顔になる。 「ロディ、冒険者協会にいけって言われた?」 「言われたねぇ。」 「じゃ、行こうか。」 聞きたいことは色々あるのだけれど、そこに行けば教えてくれるんだろう。 俺はフィーと一緒に冒険者協会へ向かった。 「受付はー……そこか。」 机の上に呼び鈴があり、その奥にキレイなお姉さんが座っているのが見える。 こちらに気づくと手を振ってくれた。 「ココは、冒険者協会ですか?」 「はい、そうですよ。アナタは……到着したばかりの無色(ノービス)さんですね。」 「こいつはロディ。プロップさん、諸々説明してあげて。」 「フィーさん、分かりました。では、ロディさんはこちらへどうぞ。」 プロップさんの案内で、冒険者協会の奥へ促される。 「フィーは来ないの?」 「その先は初心者講習所(チュートリアル)だから、俺は入れないの。  終わるまで適当に待ってるから、いっといで。」 「ちぇ、さっさと終わらせてくるねー。」 促されるまま、俺はプロップさんの後をついていく。廊下を見ると、部屋が複数あり、一つ一つの部屋の用途が扉と扉の前に出ている板に書いてある。 剣術、体術、魔法、信仰……練習する場所が決められているようだ。 「ロディさんは、こちらです。席は好きな場所へ座ってください。」 扉には無色(ノービス)研修室、と書いてあった。そりゃそうか。 部屋に入ると教室のような感じになっている。適当に座ると、プロップさんが説明を始めた。 「手短に説明させていただきますね。」 ここは、7つある国の中で一番のどかな国。ピグリツァ王国のデイドリームという街。無色の人が訪れるのは、大体ココになるそうだ。冒険者協会では、ステータスボードの提供、それと色彩検査(カラーチェック)を行っているそうだ。 「色彩検査って何ですか?」 「どの(しょく)に適正があるかを調べるんです。戦士や狩人、神官や魔法士。  無色の人は、何かしらの色に変換(チェンジ)しないと戦えないですから。」 プロップさんは説明しながら、検査の準備をしていく。 僕の目の前に置かれたのは、左から順に、ほぼ透明なガラスみたいな板と、 銀色に光る小さな金属板。それと、水色で透明な、涙のような形をした宝石。 「じゃ、ロディさんはその透明な板に両手を置いて目を瞑ってください。」 言われたとおりにすると、手のひらが少しだけ暖かくなる。 「もういいですよ。次はその隣の金属板を左手に、宝石を右手に持ってください。」 少しだけ金属板が暖かくなるのと同時に宝石もかすかに光った。 「はい、これで冒険者協会への登録は完了です。ロディさんの適性は何でしょうね。  金属板と透明な板を渡して頂いてもいいですか?」 受け取ると、プロップさんが手早く操作をする。 「なるほど。まず、透明な板(ステータスボード)から説明しますね。  これがロディさんの今のステータスを数値化したものになります。」 よくわからん。あとでフィーのと比べてみよう。 「ステータスボードは、その金属板(カード)宝石(チェッカー)があるので、ココで見るだけです。後ほど、見たいときに目の前に見れるようになります。」 金属板の両角に小さく穴を開けて、チェーンを通してから渡される。よく見てみると、名前と年齢、色、レベル、体力と魔力の数値が書かれている。裏には何も書かれていない。 「そのカードの裏には今は何も書かれてません。  ロディさんが何かしらの栄誉や勲章などを受けたときに  自動的に書き込まれていきます。それと、宝石を手に持ってください。」 宝石を手に持った途端、手の中に吸い込まれていった。 「え。なんですか、これ!?」 「大丈夫ですよ。その宝石が倒したモンスターやクエスト進行状況等を記録してくれます。  実際には達成した際にココに来て頂いて、記録を確認するんですけどね。  嘘をついたり出来ないように、そのチェッカーを渡しています。」 嘘ついても仕方ないのにな……。まぁ防止という話なら仕方ないな。 「じゃ、改めて。ロディさんの適性は、っと。何も書かれてませんね。  皆さん、何かしらの適性色(ジョブカラー)が書いてあるはずなんですが。」 「嘘でしょ?故障とか?」 「いえ、先程他の方のチェックしたので、故障はしてないです……。」 「実は振ったら出るとか。」 俺がボードを振ると、じんわりと文字が浮かび上がってきた。 「……え、冗談ですよね?そんな事できる人見たことないです。」 「でも、ほら。表示されたよ。」 「えっと、ロディさんの適性は、魔法と信仰のようなので、魔法士を推奨されてますね。」 「お、やった。そのほうが合ってそう。」 プロップさんは不思議そうにしながらも、残りの手続きを済ませてくれたので、俺はフィーのところへ戻る。 「フィー、ようやく終わったよ。」 「適性は何だった?」 「魔法士。」 「あー、やっぱり。ロディらしいや。」 「でも何かステータスボード?がおかしかったらしいんだよな。何でだろ。」 「さ、さぁね……。ロディが魔法士やるなら、俺は戦士だし、いつも通りだね。」 火球を飛ばす呪文と、手で触れた場所を癒やす呪文は教えて貰えたので、たぶん何とかなるだろう。 「ロディ、お金も渡されたでしょ。武具を買いにいこう。」 「あぁ、受け取ってたな。ボードに書いてあるわ。  そういや、カードにノービスってまだ書いてある。いつ変わるの、これ?」 「次の街に行って、試験に合格しないと変わらないよ。  今のレベルだと合格も出来ないから、まずは装備揃えてレベル上げしよう。」 フィーに促されるまま、俺はレベル上げについていった。 「やっと、これでロディに……。」 「ん?フィー、何か言った?」 「なーんにも。いこっか!」
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