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【 第四話: 緑色の怪物 】
俺が洗面所の鏡の前で見たものは、標本のように綺麗に潰れた『アイツ』だった……。
俺は慌てて、やつをティッシュで包み、ビニールに入れ、強く口を縛ってゴミ箱へ投げ捨てた。
その後、石鹸で背中を洗ったが、やつの強烈な臭いは、全然取れなかった……。
「くそっ! もう時間がない……。行かなきゃ……」
俺は仕方なく、別のシャツを着て、慌てて家を出た。
バスに乗っている時も、電車に乗っている時も、皆、俺のことを、鼻を摘んで睨むような眼つきで見ていた。
仕事中も、俺の席の周りの人は、俺と距離を置き、ヒソヒソと俺のことを噂していた。
今日俺は、上司と車である所へ打ち合わせのため向かうことになっていた。
上司が運転し、俺が助手席に座った。
車のドアを閉めた瞬間、俺の上司は、俺に向かってこう言った。
「んっ? な、何だ……? クンクン……。何か臭わないか……?」
「えっ? そ、そうですか……?」
「な、何か臭うぞ……」
上司は、車のウィンドウを全開にしたまま、打ち合わせ場所に向かうことにした。
しかし、やつの悪臭は尚も弱まる気配はなかった。
「く、臭いなぁーっ。何でこんなに臭いんだぁーっ。」
「あっ!! 前のトラックがっ!!」
「うあぁーーーーっ!!」
『キィーーーーッ!!』
『ドガーーーーン!! グシャーーーーン!!』
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