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三.
社の脇にある社務所では、一人の若い巫女がお守りなどが並んだカウンターの奥で退屈そうにスマホをいじっていたが、敷き詰められた砂利を踏み鳴らし近付いてくる二つの足音に気が付くと、慌ててスマホを隠して直立して笑顔を振る舞った。
が、
「予約していた者なんだが、ところでそのわざとらしい紅白の衣装には何か特別な意味や目的があるのかい?」
「ちょっと、誰彼構わず絡むんじゃないわよ。受付ぐらい普通にできないの?巫女なんてどうせみんなバイトよ。何もわかってるわけないじゃない」
などとあからさまに信心深さのかけらも無い二人に、
「え、えと、あの、と、とりあえずこちらにお名前、ご住所を……。遊佐木様……あ、厄払いの御祈祷にお出での二名様、ですよね……でしたら、えと……初穂料の方が五千円から三万円までお選び頂く形になっているのですが……」
と戸惑いながらもなんとか小声で案内する。
「値段で何か違うのか?」
「あぁ、いえ……あくまでお気持ちということですので、祈祷の内容や効能が異なるということは無いのですが、授与させて頂く御神札の大きさや御神饌の種類に少々違いがございます」
「ふぅーん……じゃあ、せっかくだから三万円のコースで。あぁ、カード使えないのか」
「えぇ!?……くっ……じゃ、じゃあ……あたしも、三万円……で……」
「あ、ありがとうございます……。では、準備をして参りますのでこちらでしばらくお待ち下さい」
事も無げに支払う遊佐木と、苦々しい表情で握り締めた三枚の札を差し出す未莉亜に、おろおろとしながらも頭を下げると巫女は足早に立ち去って行った。
「どうした?未莉亜」
「厄払い……厄払い……極秘VIPディナー……極秘VIPディナー……」
「よくわからんが……というかなんで予約したのに待たされるんだろうな。来るのはわかってたはずじゃないか。この待ち時間もコースに含まれているのかな、何かこう、焦らされることで気持ちが高まる的な」
「単に段取り悪いだけでしょ。あとコースって言い方やめなさい。なんか卑猥だわ、巫女だし」
「?何を言ってるのかよく……」
「お待たせ致しました。こちらへお入り下さい」
既に疲れ果てた様子の未莉亜に遊佐木が首を傾げていると、先ほどの巫女が再び現れ二人を社へといざなった。
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