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一.
二人の若い女が、色もあせて朽ち掛けた鳥居をくぐり、どこまで上らせるのかというような急で長い石段を、息を切らせながら一歩一歩踏みしめていた。
「っていうか女の厄年ってのはなんだ?
いちばん女が輝く年頃を狙い撃ちにして出鼻をくじこうとか、そういう意図で設定されているのか?
こっちは色々あってやっと大学入って本格的な自分の人生をスタートさせたところなんだぞ?
しかも本厄を中心に前後一年も厄年扱いするとは、だったら最初から厄年ではなく厄三年とはっきり言ってしまったらどうなんだ?
特に三十代の厄年なんか、間に一年、気休め程度の休みがあるだけで、もはや七年連続厄年みたいなもんだからな。
なんちゃらセレクト賞じゃあるまいし、七年連続!じゃないんだよ。
なんだかんだ足繁く祈祷に通わせていつの間にか信者として取り込もうというつもりじゃあるまいな?
ふふん、そうはいくものか。
占いなどに一喜一憂している一般女子ならばともかく、科学の申し子と自負するこの私が、お金を払ってただ祈るだけで幸せをつかもうなどという底の浅い短絡的な世界観に、ほだされることなど有り得るわけが無かろう。
しかしまぁこれも一つの科学的な調査ではあるからな。
厄払いなどと言う人間の儀式行為が、心理面も含め、実際現実に何を行い何をもたらすものなのか、身をもって体験した上で改めて考察し証明できる理があろう。
そう、今日はそのために来たのだ。
だから存分に全ての式次第を五感を集中して余す所なく体感して帰らなければな」
「遊佐木、あんた一人でずっと何を喋ってんのよ?
大学入るまでずっと超長期的引きこもりだったとかなんとか、そんなのは別に知ったことじゃないけど、今はもうそうじゃないんだからいい加減まともなコミュニケーションを覚えたら?
っていうかそもそも小学校から高校までほぼ行ったことが無いなんて、ほんとなわけ?
有り得なくない?」
都会の夜の街にでもいそうな、盛り気味の金髪巻毛の女が、やっと何か一人で勝手に結論を出し終えて沈黙した長い黒髪の女に、面倒臭そうにため息まじりに言った。
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