運命

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運命

丘上から眺める、水面反射した港が大好きで、 何かあるたびにこの見晴らしのいい窓の部屋に来てしまう。 港町を囲む小さなペルデドル公国の宮殿は先祖代々私たちが暮らしてきた場所。 わたし自身、王家に産まれた人間としてペルデドルの地から離れる事はないと思っていた。 「シファ、我が国の経済破綻(はたん)の事は分かっているだろう。 我が(だい)で帝国に忠誠を誓えば、国と民の安全は皇帝の指示で保証される」 「わたし達の国は唯一の独立国家(どくりつこっか)です 帝国の支配下に、まさか入るのですか?」 周辺国はすべて大国イウリオス帝国の統治下になり我がペルデドル公国は長きに渡り独立国家として各国からの観光客に溢れかえっていたが、近年は港の漁が台風の影響で不漁となり、更に追い討ちをかけるように海の向こうの国から密入国の船が近づく事も増えて観光客も減少してしまった。 「当家は、ペルデドル公国の代表として率いてきたが我が代でイウリオスの統治下に加わることにした シファよ……」 いつも明るく優しい王様。 今は悲しそうに声も掠れて不健康なクマが目の下に宿る父。 「はい、お父様」 「皇帝は皇后となる妃を統治国から1人出すことを望んでいる。 つまり、我が娘は一人だけ……シファよ帝国の後宮に行ってはくれないか」 どう助けようか、元気づけるのが最善か考えを巡らせていたシファは考えるのを強制終了されてしまった 「つまり、すでに帝国の統治下となったという事ですのね……もちろんお受けしますお父様。」 驚くべきことではない、噂はどこからか伝わってくるもの。 「……皇帝は本気で皇后を欲しがっているわけじゃないから気負いはしなくてよい。 ここだけの話、形だけを御所望だ」 シファは皇帝という人物は映像でしか見た事がなく、その映像の皇帝は表面的な笑みを浮かべて民衆に手を振る数十秒の時間しかなく皇帝がどんな人物かなど、噂でしか知らない。 敵には極刑を与え、政治には民を第一に優先。 海の向こうの野蛮な国の宰相一族を殺してまで平和条約を結んだ『冷徹非道の皇帝』。 「……可愛い一人娘を見知らぬ土地に行かせるのは心配だがシファ、安心してくれ。 皇帝は飾りの妃を望んでいるからお前が何か頑張る必要はない……後宮の待遇も格別なものだからな。」 「それなら、お父様の言う通り大人しく過ごします」 父の口から確かに〝統治国から〟と言った わたし以外にも6名はいる事になる、美しい国からはどんな方が来るのだろう……歴史的な情報だと後宮は怖いところだと聞くけれど、わたしは大人しく優雅に暮らせればそれでいいの。 こんな田舎っぽい国の王女なんて所詮、誰も見向きしないわよね、ならイウリオス帝国で不自由なく暮らす。 シファは心配そうな父にふんわり柔らかな笑みを返した。
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