運命

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※イウリオス帝国議会 厳格な雰囲気の調度品で飾った冷たい石壁で囲まれた議会の間にはすでに全員が揃っていた。 ゆっくりと歩む彼に皆が立ち上がり目礼で挨拶を交わし彼が奥の一際、豪華な椅子に座ると全員が腰を下ろす 「遅れてすまない、では始めてくれ。」 彼はまだ若い。 なのに高齢の男はへりくだった姿勢で事を進めていく。 「まずは此度(こたび)、行われる国連軍(こくれんぐん)対警察隊の指揮官を決めなくてはなりませぬ。」 もっさりとした白髭を撫でつけながら細身の紳士は重そうな瞼から覗くように彼を見る。 「防衛大臣のお好きなようにすればいい、前回の国連軍指揮官は俺の妃となったが……他に適任者が居ないほどか?」 彼は堂々と、というより少し挑発気味に言い放つ 「警察隊の指揮官は国連警察庁長官でいいだろう? それにだ、ジアン大臣」 「何ですかなヴェルデ皇帝陛下。」 「私的な問題で済まないが、我が国の貴族出身の女も毎年このイベントを好んでいるみたいでな。 今度の国連軍指揮官は俺が良いと戯言(たわごと)を抜かす奴もいるがどう思う?」 彼は折角(せっかく)の整った顔が台無しになるくらいの歪んだ形相でジアンを睨み返した。 半世紀ほど歳上の老いぼれ達が先程までの眠そうな目を見開き、即座に()から目を離した。 そう、彼こそ7カ国の主権国家の君主でありイウリオス帝国第二十七代皇帝ヴェルデである。 「こ、皇帝陛下それは誠でございますか。なんと東南院出のお妃様がそのような意見(・・)を言うなど……不敬罪でもおかしくありませぬ、やはり東南院の方は礼儀がなっておりませんな」 西南院側の男は大振りな言動で扇子をひらき東南院側に目を向け、応戦する様に東南院側のジアン大臣が身を震わせて赤くなった目を吊り上げる 「何を言うかっ! そちらの西南院は男児が多くて争いが絶えぬではないか。 その都度(つど)、我々が後始末をしているというに良くも言えたものだ」 ジアン大臣の突いたところは痛く真っ当であるが西南院も負けてはいられず今にも東南院と言い争う姿勢を見せるが真っ赤な顔はすでに余裕はなく声が震えていく 「なっ、それよりも今は陛下の側室の言動をっ――」 「――鎮まれ、耳触りだ。」 ヴェルデの一言で怒号は鎮まり返った 「皇帝陛下、我々の娘は陛下の側室でありまして、この国の安泰を一番に考えるための非礼でございましょう……お許しください陛下。」 ジアン大臣はゆっくりと立ち上がり、弁明を申してヴェルデの返答を待った 「良い、俺は戯言を申す者がいると言ったまでだ。 それほど国際交流会は娯楽とされているらしいな……前回の国連軍指揮官であったシイカ妃の推薦はシュメルツ総督が良いそうだが判断は任せよう。」 ヴェルデの言うシイカ妃は半年前までは国連軍指揮官として名を馳せた女元帥(げんすい)であり、軍事国家であるハルトゥ王国の元第一王女でもあった。 「そうですかシイカ妃が言うなれば、そうする他ないでしょう……陛下、お礼申し上げます。」 他国妃(たこくひ)に反対派の東南院所属、防衛省大臣ジアンでも妃が推薦する者ならば実力が確かな保証が高い事は認めざるおえない。 これ以上、意見(・・)は言えず議会は幕を閉じた。
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