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 ーーこれは夢だ。  キツネ先輩に書類の件で聞きたい事があって、部室を覗いた。  キツネ先輩は演劇部に所属しており、イベントが近い日はそちらに集中する。  この時は、近所の商店街のハロウィン祭りで行う劇の練習中だった。 「あなたの願いを言いなさいーー何でも叶えてあげましょう」  衣装合わせも兼ねていたのか、キツネ先輩は制服ではなかった。 「この王子となりてこの国の姫と結ばれたいーー」  某竜を倒すゲームで見る商人みたいな服装の男が、そう願った。  キツネ先輩は、アラビアンナイトに出てくる美女がするようなヴェールを纏って優美に壇上を駆ける。 「そんな望みなら訳はない。何せ私は世界最高の魔神ーー造作もない」  フワリと舞って、袖から小さなステッキを取り出す。 「さあ、行こうか我が主。ーー君を必ず幸せにしてあげよう」  ステッキを振ると、他の部員がついたてで相手の姿を隠す。  次に現れた時、男は華美な出で立ちに変わっていた。
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