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キツネ先輩は「天才」と言われていた。
相手の望む演技を、相手の望む反応を、見事に演じ相手を自由自在に自分の世界に引きずりこむことができる。
それも、即興であろうと関係なく、この劇の台本も、昨日渡されたはずのものだ。にも拘らず、他の部員が台本片手にたどたどしい演技をする中で、一人見事に演じていた。
「ーーえ、っと」
「如何した主? 臆することはない、高らかに姫を迎えに行こうぞ。さあ、号令をあげてくれ」
「ぁーーオホン……では行こうか、我が有能なる魔神よ!!」
どのセリフか忘れてしまったのか、言葉につまった相手役のフォローをアドリブで入れた。
普段生徒会室で見せる姿とは違う印象を抱くキツネ先輩は、とても綺麗だった。
確かにこれなら「アイドルになる」等と軽く言える自信も持てるのも不思議ではない。
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